《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第8話「ポーラー・ファミリーの朝寝坊の謎」

きょうはポーラー・ファミリーのお話です。

まっしろくてふわふわカシミヤが素敵なポーラー・ファミリー。

そのいちばん大きなキャラクターは、ごぞんじパパ・ポーラー。いつものんびり本を読んだり、ハンモックで昼寝したり、ときには何日もかけて好きな料理をつくったり‥‥。

なにからなにまでスローライフで暮らしているパパ・ポーラーは、森のみんなの人気者です。

同じポーラー・ファミリーで、ただいま育ち盛りの男の子、7人のベビー・コピーヌたちのリーダー、ベビー・ポーラー。まだまだ幼くて、ときどきいたずらもしますし、みんなと一緒に森の中を元気にかけまわりますが、他のベビ・コピーヌたちと比べれば、やっぱり違います。ちょっとしたしぐさにも、ポーラー・ファミリー特有のゆったりとした落ち着きを感じさせます。

でももうひとつ、パパ・ポーラーとベビー・ポーラーのそっくりなところがあります。ポーラー・ファミリーに共通で、ポーラー・ファミリーだけの特長。それは、とっても朝寝坊だってこと。

パパ・ポーラーは自分の庭の日時計が「朝ごはん」を指すと起き出してきますが、実はその時刻は、普通のみんなのお昼のこと。

ベビー・ポーラーはまだそこまで大変な寝坊ではありませんが、それでも他のベビー・コピーヌたちが起き出して、カシミヤの手入れをしたり、朝ごはんのしたくをしているというのに、いつもいちばん最後に起き出してきます。

「ポーラー、もうとっくに朝だよ」(スカイ)
「ふあ~~、もう朝? もっと眠りたいなあ」(ポーラー)
「最近、起き出してくるのがだんだん遅くなっていない?」(ローズ)
「パパ・ポーラーに似てきてるのよ」(バン)
「ポーラーがパパ・ポーラーみたいになるの? うおもしろーい!」(リラ)
「ボク、もうちょっと寝てくる。さっきの夢の続き、みなくちゃ」(ポーラー)
「夢の続き? ヘンなこと言ってる!」(ココ)


でも、ポーラー・ファミリーって、どうしてこんなに朝寝坊なのでしょう? 

その理由は、ポーラー・ファミリーにはとても不思議な特技があること。つまり、夢をみる力です。

たとえば、パパ・ポーラーがベッドに入って「さあ眠ろう」というとき、「きょうはどんな夢にしようかな」と心の中をぐるりとみわたして、「おいしい料理」、「楽しいハイキング」、「ジャングルの探検物語」、「ケンカの後の仲直り」、といったいろいろなメニューの中から「今夜の夢番組」を選んでおけば、思い通りの素敵な夢がみられるというわけです。もちろん夢ですから、いったん眠ってしまうと、自分では自由にできません。


何かの拍子に、楽しい夢の途中で目が覚めてしまうこともあります。そんなときは、また目をとじて、「続きをよろしく」と心の中でオーダーすると、すぐに同じ夢の続きがみられます。そんな夢みる力があったらいいな、って、みなさんも思いませんか。

またパパ・ポーラーの場合、夢をみている途中でちょっとおなかがすいたなあと思ったら、「ここでケーキのCMが欲しいな」とオーダーすると、夢の途中に30秒のおいしいケーキ屋さんのCMが流れることになっています。

眠っている・パパ・ポーラーのほっぺがふくらんで、ペロリと舌が出ていたら、それはきっと本当においしいケーキのCMです。

でも、やっぱり夢ですから、いくらパパ・ポーラーでもストーリー展開は自由にはできません。もし夢のストーリーが全部あらかじめ決まっていたら、つまらないですよね。

だから、ときには夢の中で、想像もしなかった恐ろしい出来事や悲しい事件に出会うこともあります。

しかしポーラーはけっして夢をみるのを止めはしません。のんびりしているけれども、とても心の強いコピーヌなのです。怖い夢も、悲しい夢も、いつもハッピーエンドになることを信じています。

実際に、パパ・ポーラーの見る夢はいつもハッピー。だからめざめているとき、パパ・ポーラーいつもハッピーな気持ちで、誰にもやさしくできるの です。

もうひとつ、ポーラー・ファミリーの夢には不思議な力があります。それは、夢を交換できる、ということ。最近、パパ・ポーラーの夢の中に、ベビー・ポーラーが訪ねてくるようになりました。

「パパ・ポーラー、夢を貸してちょうだい」
「やあ、よく来たね。好きな夢番組を選んでごらん」
「この“堀ぽっ太とケンちゃんの石”って、どんな夢?」
「魔法使いの学校に入学した男の子のお話だよ」
「ふーん、おもしろそうだ。借りていくね。じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ。グッド・ドリーミング、ベビー」


カシミヤの森の中、パパ・ポーラーの家とベビー・ポーラーが住むコピーヌ・ベビーたちの家は、歩いて10分ほど、小高い丘ひとつぶん離れています。

その2つの家の間で、お月様が輝く空の下、毎夜、毎夜2人のポーラー種のコピーヌが楽しい夢を交換しあっているなんて、いったい誰が想像できるでしょう。

でも、パパ・ポーラーとベビー・ポーラーが自由に夢を見られて、しかも夢の中で自由にお話できたり、夢を交換できるなんて、素敵だと思いませんか。

そんなに夢が好きだから、いつまでも寝坊なんですね。もうわかりましたね、ポーラー・ファミリーの朝寝坊の秘密。

さて、ここでちょっと大事なお話。ポーラー・ファミリーは、自由に夢をみる不思議な力を持っています。では、どうしてそんな力に恵まれたのでしょう? それは、パパ・ポーラーも、ベビー・ポーラーも、カシミヤの森の「ねむの木」の下で生まれたから。

「ねむの木」は、いつも静かに森の中に立っています。

よく見ると、枝には細くてかわいい小さな葉がきれいに並んでいます。日が沈んで夜になると、いっぱいならんだその葉っぱたちは、まるでからだを細めるように折りたたんで眠ります。

そして朝になると、からだを広げてお日様の光をいっぱいに浴びます。

すべてのポーラー・ファミリーは、この「ねむの木」の下で生まれます。自由に夢を見る、不思議な力を秘めて。やがて成長すると、自由に夢を見る不思議な力を、自由自在に使いこなせるようになるのです。

ポーラー・ファミリーだけではありません。カシミヤの森のコピーヌたちは、みんなそれぞれ特別な力を持っています。その不思議な力は、カシミヤの森から与えられた力なのです。エボニー・ファミリーはどんな力を、カシミヤの森から与えられているのでしょう。エディはどんな力を? スカイは? ローズは? ・・・・・・・・・・・・・

そのお話は、またいつか、きっと。

(つづく) 

(stories and concept by omrais and mycashmere)