《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第11話「クリスマス おしゃべりな招待状」

クリスマスパーティの準備を始めたコピーヌたちとは別に、エディの極秘指令を受けてパレットタウンへ飛びたったエンジェル・ベア。背中に積んだメールボックスには何が入っているのでしょう? そして、目的地はどこ?

ふと下を見ると、ハイスクールのとんがり時計台が見えます。エンジェル・ベアは時計台をくるりとまわって、ダウンタウンめざして飛んでいきました。やがて前方に、赤い屋根と白い壁のツートンカラーのかわいい1軒のお家。そのお家をめざしてエンジェル・ベアはすいーっと急降下してゆき、ストンと、玄関の前に立ちました。

「エンジェル・ベアのエアメール便です! お届けものです」
「ハーイ」


ドアを開けて元気な女の子が顔を出しました。

「ハナ?」
「そうよ」
「はい、カシミヤの森から」

そう言ってメールボックスを手渡しました。

「確かにお届けしましたよ。それじゃ」
「まあ、何かしら?」


ハナは部屋に入って、さっそくメールボックスを開けてみました。中に入っていたのは、素敵なビニールの透明なバッグに入ったウサギのぬいぐるみ。そう、ハニーバニー! でもピクリとも動きませんし、あんなにおしゃべりなのにひとことも口もききません。実は、これはコピーヌたちのちょっとした秘密のひとつ。コピーヌたちはこの不思議なビニールのバッグに入っているときは、単なるぬいぐるみのお人形。でも、いったんバッグから出ると、人間たちと話をしたり、一緒に遊んだり、生き生きと動き出すのです。ハナはバッグの中からハニーバニーを取り出しました。

「ああ、やっと出られた。エンジェル・ベアのフライトって、見かけによらず乱暴なん
だから、ボックスの中であっちにぶつかり、こっちにぶつかりで、ホントにひどいよ
ね。あなたがハナ? わたしハニーバニー、よろしく」
「あ、ええ、よろしく」
「どう、最近?」
「どうって?」
「キョウとケンカしたんだって?」

「‥‥‥‥」 
「よくあることさ。気にしない、気にしない」 
「‥‥‥‥‥‥」 
「キョウ、ゴメンって言ってたよ」 
「あなた、ご用は何?」 
「わたし? わたしは招待状よ」 
「えっ?」 
「カシミヤの森のクリスマスパーティへの招待状。空飛ぶ招待状って、素敵じゃない。 
キョウから話を聞いて、これはひとつ助けてあげなくちゃ、なんて思っ」
 

突然ハニーバニーの言葉が止まりました。おしゃべりなハニーバニーを、ハナがバッグ に戻してしまったからです。ハナはそのまま部屋を出ていってしまいました。 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

それから何分たったでしょうか。ハナが部屋に戻ってきました。そしてバッグ中の動かないハニーバニーをじっと見つめていましたが、やがてもう一度、ゆっくり外に出してやりました。

「びっくりするよ、もう。急にバッグに戻すなんて。まだ怒っているの、キョウのこと」
「そうじゃないの。わたしもキョウと仲直りがしたいんだけど、きっかけがなくて。つい。
わたしって本当はお料理が上手じゃないし、キョウには悪いことしたなって、思ってるんだ」
「ほー、ほー、ほー、そうですか。それなら話は早い。クリスマスパーティへいらっし ゃい。
みんな待ってるよ。」
「でも‥‥ひとりじゃ行けないわ」
「わたしと一緒に行こうよ。それまで泊めてもらおうかな」
「ありがとう。いいわ、当分の間、お客さまね。ちょうどいいわ、
いまクッキー焼き上がったところなの」


ハナがキッチンからおいしそうにこんがり焼けたクッキーをかわいいお皿いっぱいにのせて来ました。

「さ、いっぱい召し上がれ」
「ヤッホー、いただきまーす


うれしいときのクセで、耳をピクピクっとダンスさせたハニーバニー、ひとくち食べて、

「‥‥うっ、あ、あ、あまい、甘すぎる。みず、水ちょうだい!」

ハニーバニーが食べたのは、シュガーがたっぷり入りすぎたクッキー。こんどもハナ、シュガーの加減を間違えたようです。またまた、ちょっとメゲてしまったハナを見て、

「大丈夫、大丈夫、こんなこともあるよ、ハハハハ」

でも、クリスマス・イブが来るまで、ハナのどんな手料理を食べることになるのか、ちょっと不安なハニーバニーでした。

(つづく)

 (stories and concept by omrais and mycashmere)