《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第21話「黄金のブラシを探せ 3 ノースランドですってんころりん1日目」

トンネルを抜けて、ノースランドにやってきた3匹のコピーヌ。
目の前に広がるのは、白夜のもとで、どこまでも、どこまでも広がる森と大草原でした。

「ノースランドに着いたんだ」(エボニー)
「ここに黄金のブラシがあるんだね」(ベビーポーラー)


エボニーとベビーポーラーは顔を見合わせてうなずきました。エディはといえば、カチンコチンに凍ったまま。でも、エボニーがセーターを着せてやると、あっという間に解凍されてもとにもどっていきました。パパポーラーのつくってくれたセーターの威力はすごいね。どうやら素敵なボーダーのデザインに、寒さからコピーヌたちを守ってくれる不思議な力があるようです。

「あーびっくりした。もう絶対にセーター脱がないぞ」(エディ)
「エディ、いよいよこれから探検よ」(エボニー)
「よし、行こう」(エディ)
「ベビーポーラー、地図見てよ。これからどうすればいいの?」(エボニー)
「わかりません」(ベビーポーラー)
「エッ、どういうこと?」(エボニー)
「地図には何も書いてないんです」(ベビーポーラー)
「そんな! ちょっと見せて」(エボニー)


エボニーがベビーポーラーから地図を取ってのぞき込みました。確かに地図は、トンネルを抜けたところにノースランドがあり、そこには草原と森が広がっていることを示していました。そして広い草原の真ん中に黄金のブラシのマークが書かれていました。

「ほんとだ、これじゃ何もわからない」(エボニー)
「この×マークは何だろう?」(エディ)


エディの示したところ、トンネルの出口のあたりに小さな×マークが付いていました。

「何だろう?」(ベビーポーラー)

エディがトコトコと歩きだし、あたりを見回して言いました。

「地図からすると、このへんだよね」(エディ)


といった瞬間、エディの姿が消えてしまいました。

「あーーーーー」(エディ)


エボニーとベビーエボニーがあわてて駆け寄ると、そこには穴がポッカリ空いていました。おそる
おそる穴をのぞきこむと、底のほうからエディが
痛そうにおしりを押さえながら、見上げていました。

「イテテテ」(エディ)

「エディ、だいじょうぶ?」(エボニー)
「冗談じゃないよ、こんなところに穴があるなんて」(エディ)
「早く上がっておいでよ」(エボニー)
「どうやって?」(エディ)
「なんとかして上がるのよ」(エボニー)
「無理だよ、ひとりじゃ」(エディ)


穴はかなり深くて、何かロープか何かがなくてはとても上がれそうにありません。

「困ったな」(エボニー)


そのときベビーポーラーが言いました。

「ボク、眠ります」(ベビーポーラー)


エボニーはびっくりしました。

「なんでこんな大事なときに眠っちゃうのよ!」(エボニー)
「夢の中で、パパポーラーにどうしたらいいか聞いてみます」(ベビーポーラー)


エボニーがポンと手をたたきました。

「そうだったわ。わかった。すぐ寝て!早く寝て!」(エボニー)


エボニーは自分のリュックの中から道具を出し、大急ぎでテントを張りました。

「ここをキャンプにしよう」(エボニー)
「じゃ、おやすみなさい」(ベビーポーラー)


ベビーポーラーはのっそりとテントの中にもぐりこんでいきました。

「わたしはどうしようかな? そうだ、そのへんを探検してこよう」(エボニー)

そのとき地面の下のほうから、悲鳴のような声が聞こえてきました。

「おーい、早く、タスケテ・・・」(エディ)

 エボニーは穴に駆け寄って、覗き込みながら言いました。

「エディ、ちょっとタイムね。もうちょっとそこにいてね」(エボニー)
「ウッソー、ボクこんなところ1秒だってイヤだよ。」(エディ)
「仕方ないでしょ。助ける方法がわかんないだから」(エボニー)
「エボニーの薄情もの!もう絶対に一緒に遊んでやらないぞ!」(エディ)
「じゃあね」(エボニー)
「イヤ、ウソです。エボニー大好き! ね、だから助けて! お願い。エボニー様、エボニー大統領、エボニー神様!エボニー? エボニー!」(エディ)


エボニーは口笛を吹きながら、リュックを覗き込みました。

「ノースランドっていうからてっきり雪があると思うじゃない。スキーもボードもできないなら、コレでいくか」


エボニーが取り出したにはローラースケート。こんなものまで用意してきたのね。さすがエボニー。エボニーはローラースケートをはいて、さっそくノースランドの探検に出かけました。うしろほうで、エディの声がかぼそく聞こえていました。

「ボクをひとりにしないでよ・・・・」


そのころベビーポーラーはもうぐっすりと夢の中で、パパポーラーに話しかけていました。

「パパポーラー、困ったことになりました」

 (つづく)

(stories and concept by omrais and mycashmere)