《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第22話「黄金のブラシを探せ 4 ノースランドでぶっとんだ2日目」

ポーラー種のコピーヌは夢見る不思議な力を持っています。 

見たい夢を自由自在に見たり、夢の中で同じポーラー種の仲間とテレパシーのように話をすることができるのです。ノースランドに着いたベビーポーラーが、穴に落っこちたエディを救うために、夢の中でパパポーラーに語りかけました。

「パパポーラー、ちょっと困ったことになりました」


するとさっそく夢の中に、パパポーラーが現れました。

「黄金のブラシを呼ぶんだ」(パパポーラー)
「どういうことですか?」(ベビーポーラー)
「黄金のブラシならきっと助けてくれる」(パパポーラー)
「黄金のブラシというのは、ブラシじゃないの?」(ベビーポーラー)
「そうだよ。黄金のブラシは世界に1頭しかいない大切な馬の名前なんだ」(パパポーラー)
「でも、どうやって呼べばいいの?」(ベビーポーラー)
「これから言う通りにするんだ・・・・・・」(パパポーラー)

そのころエディは、落っこちた穴の中でけっこうくつろいでいました。両手にドーナッツを持って、パクパク、むっしゃむしゃ。リュックの中のドーナッツをすっかりたいらげてしまいました。

「シナモンもいいけど、ドーナッツはやっぱりチョコがいちばんだな」


どんなときでもいちばん最初にあわてふためき、
いちばん最初にケロッと明るくなるエディ。

「それにしても、エボニーたちどうしたん
だろう。ちゃんと助けてくれるんだろうな」


エディは立ち上がって穴の上を見上げました。

「高いなあ。とても手が届かないや。ロープでもするするっと降ろしてくれたらなあ・・・」

と思ったとき、上のほうからするするっと降りて
くるものがあります。黄金に光る太いロープ。
やがて黄金のロープはエディの目の前に届いたか
と思うと、プルプルッと揺れました。まるで「こんにちは」と挨拶をするように。


エディはあっけにとられて見ていました。 

「エディ、はやくつかんで!」

見上げると、ベビーポーラーでした。エディがおそるおそるロープをつかむと、ロープはゆっくり上に上がっていき、やがてエディのからだは地上に出ていきました。

「よかったね、エディ」


ベビーポーラーが声をかけても、エディは返事をしません。どんぐりまなこで不思議そうに手に持ったロープを見つめています。

「・・・お・う・ご・ん・の、ブ、ブ・ラ・シ、だ」


エディは黄金に輝くロープを大事そうに持ったまま、ゆっくりと目を上げて、そのロープをおしりから生やしている大きな生き物の姿をとらえました。

「エディ、黄金のブラシだよ。あいさつしなよ」(ベビーポーラー)
「・・・・・・しっぽ、ちょうだい」(エディ)


エディのへんなあいさつで、ドッと大笑い。

「びっくりしちゃった。黄金のブラシって、まるごとだったんだ!へえ、そうなの。へえ、そう、そう、そうかあ・・」


本当にびっくりしたエディ。黄金のブラシのまわりをグルグルまわって、全身をじろじろ見つめています。黄金に輝くからだ、黄金に輝くたてがみ、黄金に輝く足、そして黄金に輝くしっぽ。本当にパパポーラーから聞いた通りの美しさです。

「カシミヤの森の伝説を聞きました。元気に成長されたんですね」(ベビーポーラー) 
「ありがとう。キミたちのおかげだよ。でもノースランドで会えるなんて思わなかった。
煙の知らせを上げたのはキミ?」
(黄金のブラシ)
「パパポーラーが教えてくれた通り、カシミヤの毛を1本抜いて、セーターのボーダー柄にこすって火を起したんです」(ベビーポーラー)
「かしこいんだね、キミたち」(黄金のブラシ)
「他の馬たちはどうしたのですか」(ベビーポーラー)
「ノースランドの大地に眠っている」(黄金のブラシ)
「黄金のブラシさん、ひとり?」(ベビーポーラー)
「そう。わたしは永遠の生命をさずかっている」(黄金のブラシ)
「他に生き物はいないの?」(ベビーポーラー)
「イーノがいる。小さいからだの猪の一族だ。キミたちはイーノが掘った穴に落っこちたんだよ」(黄金のブラシ)


長い月日の流れ、思いがけない再会、ノースランドの大地。黄金のブラシとベビーポーラーは静かに話し込むのでした。

一方、エディはというと、まだ黄金のブラシのからだを珍しそうに見つめています。でもさっきと違って目つきがちょっとヘン。ギラギラ光っているし、いつのまにか手にハサミを握っています。おや、黄金のブラシのうしろの
ほうにまわったぞ。あ、しっぽをつかもうとしている。もしかして・・・

カポーン!
あ あ あ あ あ あ あ
あ あ  ーーーーーーー
(エディ)

黄金のブラシに蹴られて、ぶっとんでいくエディ。

「あ、ゴメン、習性なんだ。うしろに誰かいると
蹴っちゃうんだ」
(黄金のブラシ)


せっかく穴から助けてもらい、黄金のブラシにも
出会えたのに、白夜のノースランドを飛んでいくエディ。はたしてカシミヤの森に無事に帰れるのでしょうか? そしてエボニーは、いったいどこで何をしているのでしょうか?


(つづく)

(stories and concept by omrais and mycashmere)