《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第23話「黄金のブラシを探せ 5 ノースランドで大レース3日目」

黄金のブラシにけっとばされて、ノースランドの空を飛んでいくエディ。
と、エディのゆくてに、ものすごい土けむりが見えてきました。つっぱしるイーノの大群です。
土煙をあげて猛スピードで駆けて行く群れのまんなかに、エディは悲鳴をあげながら落っこちていきました。

「ウワぁぁぁーーーーーー
た、す、け、てぇぇぇぇーーー!」


エディ、こんどこそ絶体絶命! ラッキーはそんなに続かないぞ・・・・・と思ったのに、またまたラッキー。ストンッと落っこちたところは、つっぱしる1頭のイーノの背中の上。落とされないように、エディはあわててイーノにしがみつきました。


「助かったああ、よかった!」

エディはイーノの群れを見回してみました。
よく見ると、イーノってとっても可愛らしい動物です。みんなからだは小さくて、黒っぽい横じまの模様があります。普通の森に住んでいるイノシシは、ちょうど子供の頃、こんな模様があります。その模様が野菜のウリに似ているので「ウリ坊」とか「うりんこ」と呼ばれているのを知っている人もいるでしょう。

普通のイノシシの場合、この模様は大人になると消えてしまいますが、ノースランドのイーノは大人になっても残っていますし、からだも小さいまま。

エディはイーノに話しかけました。

「ボーダーがかわいいね。ボクのセーターと同じだよ」
「キミ、だれブフィ? ちょっと重いよブヒィ」
「チェ、せっかくお礼を言おうと思ったのに」


それにしてもイーノは何十頭、いや何百頭いるのでしょうか。
みんな夢中になって同じ方向めざしてつっぱしっています。エディはちょっと心配になってきました。

「ねえ、どこに行くの?」
「わからないブヒ、先頭に聞いてよブヒ」
「先頭?」


エディが土煙の中を目を凝らして前の方を見ると、1頭のイーノの上で、どこかで見た覚えのあるボーダー模様がピョンピョンとびはねながら大声を上げています。

「ヤッホー、もっと速く走れーーーーー!」


あれ、あの元気のいい声は、もしかして・・・・

「エボニー!」


自分を呼ぶ声でふりむいたエボニーがエディを見つけて、

「あれ、エディ、どうしてそこにいるの? 穴の中に落っこちていたんじゃないの?」
「うーん、ま、いろいろありまして」
「この動物たちの力を借りて、エディを助けようと思ったのに」
「それより、エボニー、見つけたんだよ、黄金のブラシ」
「なんですって!!!」
「急いで、もといたところに帰ろう」
「ようし、さあ、キミたち、最高のレースを見せてくれ!」


エボニーがポケットからクロワッサンを取り出して、自分が乗っている先頭のイーノの鼻の前にぶらさげました。イーノの鼻にこうばしいバターの香りが・・・

さあ、もうたまりません。バターの香りをめざして先頭のイーノがスピードをあげると、群れ全体がさらに速く駆け出していきました。

その頃、黄金のブラシはベビーポーラーを背中に乗せて、ノースランドを案内しました。
森のかたすみにあるジャンボポーラーのお家を訪ねました。
ジャンボポーラーはただひとり、かつて、カシミヤの森からトンネルを通ってノースランドへやってきたコピーヌ。ノースランドのきのこを食べ過ぎて、びっくりするほどの
ジャンボサイズになってしまいました。

「ジャンボポーラーはノースランドの森の知恵なんだ。仲間が大地に眠った後も、ボクにいろんなことを教えてくれる。
ボクはお礼に、ジャンボポーラーのからだを黄金のシッポでいつもグルーミングしてあげるんだ」

お家の中をのぞき込むと、ジャンボサイズの木の葉のベッド、ジャンボサイズのテーブル、それにジャンボサイズのミルクマグが見えます。

「こんにちは、ジャンボポーラー」
「おや、お客さんかな」


ベビーポーラーが振り向くと、それはそれは大きなコピーヌがにっこり笑って立っていました。

「はじめまして。カシミヤの森から来ました」
「それはそれは、よく来たね」
「もうカシミヤの森には帰らないんですか?」
「ここが気に入っちゃったからね」
「寂しくないですか?」
「黄金のブラシがいるし、気のいいイーノたちもいるし、それに、キミが来てくれたおかげで、これからはいつでも話ができるようになるさ」


そう言うと、ジャンボポーラーはベビーポーラーにすりすりほっぺタッチしました。

すると、ベビーコピーヌは一瞬の間、眠ってしまったうようです。

ふと気づくと、ジャンボポーラーがにっこり笑っていました。

「これで、キミと、それからカシミヤの森にいるパパポーラーとわたしは、いつでも夢の中で交信することができるよ」
「はい」


ジャンボポーラーは満足した顔をして、よっこらしょと背中を伸ばしました。
すると、遠くのほうに砂埃が見えました。地響きも聞こえます。

ジャンボポーラーが言いました。

「おや、イーノの群れが来るぞ。」
「ずいぶん興奮しているようだ。どうしたんだろう?」


黄金のブラシもけげんな顔をしています。

「もしかしたら、また、エディかも・・・」


ベビーポーラーはまた心配になってきました。

(つづく)

(stories and concept by omrais and mycashmere)