《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第26話「イーノ、こまっちゃウーノ」

ある朝、ラベンダー畑に住むハニーバニーが猛烈ないきおいでエディのおうちのドアをノックしました。

「エディ、エディ!」


眠そうな目をして出てきたエディに、ハニーバニーが怒った声をぶつけてきました。

「またイーノよ、お花畑をめちゃめちゃにしちゃったの!」
「なんだって?!」


ハニーバニーがラベンダー畑を連れて、エディのおうちの隣に引っ越してきてからというもの、
ふたりは大のなかよしになっていました。


ハニーバニーに続いてエディが大急ぎで現場を見に行くと、あっちこっちの花がたおれ、踏みつけられ、荒らされていました。夜の間に、またしてもイーノが乱暴に走り回ったのです。

「これは、ヒドイ!」
「もう3回目よ、ひどすぎる!」
「花のチカラをとりもどすハニーパウダーは?」
「ダメ。2回目までは効いたけど、もう使えない」
「許せない、イーノのやつ。
エディ様の庭先でこんな大事件を起こすなんて!」

モーレツに怒ったエディは、イーノを見つけにいくために駆け出していきました。

イーノというのは、エディたちが黄金のブラシを見つけるためにノースランドへ探検に行った時に出会った、小さなイノシシ。
群れをつくって乱暴に走り回る習性があり、いったん走り始めたら1晩中、まっしぐらに走り続けます。

エディたちが探検から帰ってきたとき、どういうわけか1頭だけ一緒に付いてきたのでした。

しかもそのイーノは、とっても生意気。エディにだけ妙になれなれしくて、にくたらしい口をきいては、「ブイ、ブヒ」とおもしろがっています。

そのイーノがやってきてからというもの、カシミヤの森でいろいろな騒ぎが持ち上がっていました。

「こんどこそ、アイツをとっちめてやる!」


怒りに燃えたエディが歩いていくと、向こうからココが走ってきました。

「エディ、イーノを見なかった?」
「ボクも探しているんだ。どうしたんだ?」
「チョコレートケーキを作ろうと思って板チョコを出していたら、イーノがくわえて持ってちゃったの!」
「えー、ココのケーキ、楽しみにしてたのに!」
「大事に取っておいた上等なチョコだったのよ」
「モウ、ホントーーーーーに、絶対に、カンペキに、許せない!」


エディとココは一緒にイーノを探すことにしました。
ふたりでズンズン歩いていくと、こんどは向こうからパパポーラーとベビーポーラーがやってきました。でも、なんだか様子がおかしい。ふらふらしていて、いまにも倒れそうです。

「どうしたんだい、ふたりとも。病気なの?」(エディ)
「あー、ねむ、りたい、」(パパポーラー)
「スイミンブソクって、ほんとう、つらい」(ベビーポーラー)
「あー、イーノのせいだな!」(エディ)
「だれ、か、ひと、ばんじゅう、は、しりま、わってる」(パパポーラー)
「よる、もうすこし、しずか、にし、てほし、い・・・」(ベビーポーラー)


まっしろいカシミヤのポーラー種のコピーヌは、ねむの木の下で生まれ、自由自在に夢を見ることができる不思議なチカラを持っています。


でも、一晩中、うるさい暴走族が走り回るような森では、深い眠りに入れず、スイミン不足になってしまうのです。カシミヤの森の大切な知恵を守っているポーラー種たちが病気になると、カシミヤの森そのものが大変な危機に陥ってしまうかもしれません。

「よーし、こうなったら、ボクにまかせてくれ!」(エディ)
「エディ、大丈夫? 何かいい作戦、あるの?」(ココ)
「もちろんさ。ボクが必ず解決してみせるよ」
「どうするの?」
(ベビーポーラー)
「エボニーに相談するんだ!」(エディ)

ギャフン、と思わずずっこけたコピーヌたち。

それでもすぐに気を取り直して、エディを先頭に、カシミヤの森でいちばんの行動派、エボニーのおうちへ歩いていきました。

エボニーのおうちに着くと、エボニーは屋根のてっぺんに上がって、なにやら考えごとをしていました。エボニーもまた、何か大切なことで悩んでいたのでした。

(つづく)

(stories and concept by omrais and mycashmere)