《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第17話「ハニーバニー、畑をつれておひっこし」

カシミヤの森のはずれ、ラベンダー畑に住んでいるハニーバニーは、キュートなうさぎの女の子。
うれしいことがあると、長い耳をピクピクっと動かします。
でも最近はなんだか毎日がつまりません。ラベンダー畑はコピーヌたちの住んでいるところからちょっとはなれているので、毎日一緒に遊ぶことができないのです。


「コピーヌたちのもっと近くに住みたいなあ」

でもハニーバニーには大切な仕事があります。毎日、ラベンダーの花の手入れをしなければならないのです。お水やりはもちろんのこと、病気にならないよう気をつけたり、弱っているラベンダーを見つけたらハニーパウダーをかけてやります。

ハニーパウダーというのは、ハニーバニーがつくりだした不思議なお花の栄養剤。どんなに弱っているラベンダーでも、ハニーパウダーをひとさじ根元にかけてやると、すぐに元気になります。ハニーバニーがこんなにがんばっているから、ラベンダー畑はいつもきれいに咲いているのです。

「畑ごと引っ越せればいいのに・・・」


思わず出てきた、ひとりごと。でもハニーバニーは、ちょっっぴり真剣に考えてみました。
そして、不思議なことですが、本当にそんなことができるような気がしてきたのです。
本当にそんなことが・・・。

「ハニーパウダーを使えば、もしかしたら・・・」

次の日の朝、エディのお家。いつものようにエディが起き出してきて、窓から外をのぞきました。

「イエーイ、きょうもゴキゲンなお天気だ」
でも、何かヘン。目の前の景色がいつもと違うのです。


「アレ、何かヘンだぞ。何がヘンか、よくわかんないけど」

よく見ると、エディのおウチの庭にきれいなラベンダーの花が咲いています。広さはテニスコートの半分くらい。

「あれ、いつの間に咲いたんだろう?」


エディは不思議に思いました。でも、きょうはベビー・コピーヌたちとペタンクをして遊ぶ約束だったので、急いで森の広場へ出かけていきました。その日は1日中楽しく遊び、夕方帰ってきて、コテンと眠ってしまいました。

その次の日の朝。いつものようにエディが起き出してきて、窓から外をのぞきました。

「きょうもいい天気・・・・、あれ、増えてる!」


そうです、ラベンダーの花がテニスコートいっぱいに広がって咲いているのです。

「どういうことなんだろう? とってもきれいだけど・・・・」


なにかがおかしい、不思議だ、そんな気持ちになりましたが、その日はエボニーとボーリングをする約束だったのでそのまま出かけました。そして1日中遊び、夕方帰ってきて、すぐにまた眠ってしまいました。

そのまた次の日の朝。こんどはさすがのエディも緊張した面持ちで、窓をそっと開けてみました。

「ウワッ、なんてこった!」


エディの目に入ってきたのは、ラベンダー色のじゅうたん。庭から森に続く小道まで、
目に入る景色すべてがラベンダーの花、花、花。もう玄関のドアだって開けられません。

「ボクの家がラベンダーに侵略された! 助けて、事件だーーーー」


そのときラベンダーの花の中から、ハニーバニーがかわいい顔を出しました。

「隣に引っ越してきたのよ。よろしく」


ハニーバニーはにっこり笑って、植え替えたばかりのラベンダーの根元にハニーパウダーをまいていきます。

「ラベンダー畑が引っ越してくるなんて、聞いたことがないぞ」
「引っ越すほうも大変だったんだから」
「もとの畑はどうなったの?」
「とうぶんはお休み。きれいに咲かせるに畑も休ませなきゃね。これからはここがラベンダー畑よ。エディ、うれしいでしょ」
「う、うれしい・・・・・・よ、ハニーバニー」
「でも、玄関のドアが開けられないんじゃ、出かけられないよ」
「気にしない、気にしない。はい、このロープをどうぞ」
「ロープでどうするの?」
「こうするのよ」


ハニーバニーはそう言うと、エディのお家のエントツと、庭の近くに立っている背の高い木をロープでつなぎました。

「このロープをつたって、レンジャーみたいに出かけるのよ」
「レンジャーだって?!」
「そう、カッコいいわよ」
「・・・レンジャーか、・・・それ、いいかも。やるやる!」


すぐにその気になる、おバカで愉快なエディ。でもそこがみんなに好かれるキャラクターです。春いちばん、ラベンダー畑をつれたハニーバニーの引越しは大成功でした。

進学、就職、転勤などで引越しの多いシーズン。
ゆく人、くる人に、楽しいコピーヌのプレゼントはいかが。

(つづく)

(stories and concept by omrais and mycashmere)