《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第25話「リラ、日曜日生まれ、ちいさな愛」

カシミヤの森の、よく日の当たる南の丘に、1本の不思議なトランペットリリーの木があります。

白っぽい色をした細い幹は、1.5メートルほどの高さ。幹の上のほうでは、お日様に向かって枝を四方に伸ばし、その先に大きな小判のような、鮮やかなグリーンの葉を広げます。

お日様の光をいっぱいにあびて、大きな葉を、幹が見えなくなるほど茂らせたころ、葉と葉の間に小さなつぼみが姿を見せます。

最初はそのつぼみは、まだほんの数ミリか数センチくらい。でも、1日、1日とたっていくと、驚くほどの勢いで伸びていき、数日で10センチほどの細長いサヤができあがります。


さて、おもしろいのは、ここから。

みなさんはサーカスのマジシャンをごぞんじでしょう。

あのマジシャンがよくやるマジックで、こんなのがあります。マジシャンご愛用の細いステッキ。
くるくるっと素敵に回転させ、からだの正面に持ってきて、そのまま縦にすっくと立てます。
反対の手でステッキの上のほうをつかみ、「ワン・ツー・スリー!」と声をかけてステッキのキャップをとりはずすと、ステッキの中から見事に開いた花が飛び出して、思わずみんな拍手喝采。


「あんなに細いステッキの中に、あんなに豪華ですばらしい花が隠れていたなんて!」
そんな意外な驚きに魅了されてしまいます。

実は、そんなマジックのような素晴らしい驚きがこのトランペットリリーにもあります。

太陽の恵み、うるおいのある水の恵み、そして長い時間をかけて、やっと姿を現した10センチほどのサヤ。重なり合う大きな葉の影に隠れて、いま咲こうか、いま咲こうか、と、まるでちょうどいいタイミングを見計らっているようです。


そしてある朝、本当にとつぜん、飛び出します。
サヤの2倍も3倍もある、大きな、大きな、リリーの大輪。

どうしてこんなに小さなサヤの中に、こんなに大きくて見事な花が隠れていたんでしょう?
そんな驚きと感動で、誰もが思わず目を大きく見開いてしまいます。

しかも、そんな花が、あっちにも、こっちにも、いくつも‥‥。
大きな葉の間から、本当にあのトランペットのような形の花がいくつも、いくつも、顔を覗かせます。


不思議なことに、この花が咲いているのは、ちょうど1週間。毎年、必ず月曜日に花が開き、日曜日には散ってしまいます。

不思議な力を秘めた、不思議なトランペットリリー。
いまから何年か前、いつもなら、いくつも、いくつも花を咲かせるこの木が、たったひとつしか花をつけなかったことがありました。


その1輪の花は、いつもの花とくらべて、うんと小さくて、いまにも散ってしまいそうなくらい、か弱くみえました。

この異変にいちばん最初に気づいたのはベビーコピーヌの一番上のお姉さん、ローズでした。
あまりに小さくて、人間の子供でいえばまるで未熟児のような花を心配したローズは、毎日、トランペットリリーの木を訪れました。


くる日も、くる日も、小さな花を見つめては、心からの愛情を注ぎました。


その願いが届いたのでしょうか、小さな花は咲き続けました。1週間たっても散りません。2週間たっても、3週間たっても散りませんでした。


ローズはとても不思議に思いましたが、それでも毎日、心からの願いを込めて、小さな花を見つめ続けました。

そして、7回目の日曜日のこと。

いつものようにローズが花を訪れると、花の下に小さなコピーヌが、すやすやと眠っていました。


ひざまずいたローズがそっと抱き上げると、産毛のようなやわらかなカシミヤの感触を通して、
あたたかいいのちの息づかいが伝わってきました。


ローズが見上げると、小さな花は散っていました。

カシミヤの森では、いつも不思議な力がはたらいて、新しいいのちが生まれています。

トランペットリリーの木から生まれた、妖精のようなコピーヌは、リラと名づけられ、いまでは、とっても元気で、ちょっと甘えん坊、誰にも愛されるチャーミングなベビーコピーヌになりました。
ベビーコピーヌのいちばん下の妹、かわいいリラの誕生物語。

最近、あなたのまわりで、かわいい赤ちゃんが生まれた人とはいませんか?

もし、日曜日生まれの赤ちゃんだったら、プレゼントは日曜日生まれのリラがぴったり。

素敵なメッセージといっしょにどうぞ。

(つづく)

(stories and concept by omrais and mycashmere)