《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第1話「ラベンダー畑でつかまえて」

ここは、さわやかな初夏をむかえたカシミヤの森。

きょうは心地よい風に誘われて、コピーヌベビーベアはそろってお散歩です。

ベビーポーラーを先頭に、ベビーエボニー、スカイ、ローズ、ココ、バン、リラ。
森の小道のまわりには、おだ やかな日差しを受けて、愛らしい花が色とりどりの笑顔を見せています。

ココが小さな黄色い花をみつけました。そっと花をつんで、

「ん、いい香り」

そのままちょこんと頭にのっけて、お花のヘアリボンのできあがり。

「あ、かわいい」

ココに続いてリラが白い花をヘアリボンにすると、ローズも、バンも、みんなお花のヘアリボンに夢中になりま した。

ベビーポーラーたち男の子は、木の枝をひろってきて、小さなおもちゃのログハウスをつくりはじめました。

さあ、どれくらい時間がたったでしょうか。

「あれ、リラは?」

ローズの声にうながされてまわりを見回すと、リラの姿がありません。リラはいちばん幼いコピーヌベア。好奇 心おうせいで、目をはなすといつのまにかどこかに行ってしまうのです。

この前、小川に遊びに行ったときも、魚を夢中で追いかけて深みに入り、おぼれそうになったことがあるのです。

「たいへんだ」

もうお花遊びどころではありません。みんなあわててリラをさがしはじめました。森のわき道に入ったり、小川 の近くにおりてさがしましたが、どこにもリラの姿はありません。

さあ困りました。

歩いていくと、パパエボニーのお家がありました。

「聞いてみようよ」

トントン、トントン。ベビーポーラーがノックしましたが返事がありません。

「紙がはってあるよ


みんなでのぞきこむと、

ただいま宇宙旅行中
 帰還予定は1万光年後 
キャプテン・エボニー

どうやら留守のようです。

「こんどは火星にでも行ってるのかな。でも1万光年はずいぶん長いね」
「エボニー・パパベアはせっかちだから、1万光年というのは10日くらいだよ」

スカイがそう言うと、みんな顔を見合わせて笑いました。

さらに歩いていくと、パパポーラーが気持ちよさそうにハンモックに揺られていました。

「こんにちはパパポーラー。リラを見ませんでしたか」

ポーラーベアは読書中でした。本から目を上げると、眠そうな目をしながら言いました。

「いや、見なかったよ。それにしてもきょうはいい天気だねえ」

本の好きなバンがたずねました。

「どんな本を読んでいるの?」
「不思議の国のアリスという、人間が書いた本だよ」

「どんなお話?」
「女の子が昼寝をしていて、ウサギを追いかけて、穴に落っこちるのさ」
「ずいぶんまぬけな女の子ね。そんな話なら私にも書けるわ」
「さ、行こう」


ベビーポーラーが声をかけて、また歩きはじめました。

ずいぶん長い間、森の中を探しましたが、リラは見つかりません。
いったいどこに行ってしまったのでしょうか。

ますます心配になってきました。

ふと気づくと、森の中には気持ちのいい風が吹いています。
そして、どこからでしょうか、とてもいい香りがしてきました。


「なんだろう?」

魔法にかけられたように、いい香りのするほうへ進んでいくと、
とつぜん目の前に、ひろびろとしたお花畑の風景がひらけました。

カシミヤの森の名物、いちめんの花が咲き誇るラベンダー畑でした。

明るい光の中で、あざやかに輝いているラベンダーの花、花、花。みんな何もかも忘れて、うっとり見とれています。

おや、よく見ると、ラベンダー畑のまんなかに何か動くもの‥‥。どうやらシーソーのようです。

あれれ、シーソーにのっているのは‥‥リラ!

反対側に乗っているのは、ラベンダー畑に住んでいるハニーバニー。

シーソーがぎったんばったん上下するたびに、リラベアとハニーバニーは交互に空中に5メートルもはね上がり、 キャッキャッと声を上げて遊んでいます。

「まったく、あの子ったら」
「ぼくたちも行こうよ」

コピーヌベビーベアたちはいっせいにかけだしました。

「あ、きたきた」

何10回目でしょうか、空中に高く跳ね上がったとき、リラはかけてくるコピーヌたち
の姿を見つけました。

「早くおいでよ、楽しいよ」

リラはお花遊びに夢中になっているうちにわき道に入り込み、ラベンダーの花の香りに誘われてこの畑に来たのでした。

ハニーバニーはちょうどシーソーの遊びともだちを探していたので、とつぜんの訪問者を大歓迎しました。

しかしこんどはそれどころではありません。6人もいっせいにやってきたので、ハニーバニーはうれしくってしかたありません。自慢の耳がピクピクっとダンスをはじめました。

「シーソー・パーティだ!」

やっと、みんながシーソーのまわりに集まりました 

「心配したのよ、ほんとに」

いちばん上のお姉さんベアのローズが怒ったように言うと、リラを抱きしめてすりすり、ほっぺたっちしました。


ほっぺたっちは、コピーヌたちの心のこもったあいさつ。
うれしいとき、楽しいとき、やさしい気持ちのとき、ほっぺをくっつけあって、やさしいカシミヤの感触を確かめあうのです。

「ごめんね」

それからお日さまが西の空にかたむくまで、みんなでなかよくシーソーでいっしょに遊びました。

ラベンダーの花は、静かに、静かに、そよ風にゆられていました。

(つづく)
(stories and concept by omrais and mycashmere)