「ふあ〜、よく寝ちゃった。さあお楽しみはこれから、これから」
キッチンにもどると、パン生地はじゅうぶんに発酵していて、
まるでエボニーベアご自慢のビーチボールのように大きくふくらんでいます。
それを小さくちぎって、クルクルッとまるめて、ポンとテーブルに。
また小さくちぎって、クルクルッとまるめて、ポンとテーブルに‥‥。
まっ白いポーラーベアの両手がマジックのようにすばやく動いて、まんまる生パンが次々とテーブルの上にならんでいきます。くるみでつくったおいしいアンも、まん中に上手に入れてあります。
パン作りの名人はきょうも大満足のご様子。
「はい、準備はおしまい」
ここまでくると、いよいよ最後の仕上げ。さあ急いでポーラーベア、もう夜中になっちゃうよ。
ポーラーベアはレンガでつくった自慢のオーブンの前に行き、よっこらしょ、と中を覗き込みました。
「ん?」
おや、どうしたのでしょう?
「ま、き、が、な、い」
毎日毎日パンをつくっていたので、オーブンの燃料のまきがなくなっていたのです。
さあ大変、どうするの?
でも、さすがポーラーベア。ちっともあわてません。
ゆっくりとエプロンをはずし、代わりに大きなリュックを背負うと、そのまま家を出て、
口笛をふきながら夜の森の中へ入っていきました。
誰もいなくなったキッチンのテーブルの上には、愛らしくまんまるに仕上がった生パンたちが、
「早くこんがり焼いてよ」という顔をしながら、お行儀よく整列しています。
おや、いちばんはしっこの1個の下にエディあてのメッセージが‥‥