《mycashmere》 original fantasy
『カシミヤの森のコピーヌ』

第14話「カゼをふきとばせ、元気サンバ・シスターズ」

「ゴホン、ゲホン、ハックション」

寒い、寒い、カシミヤの森。いつものように元気にはしゃぎまわっていたエディも、とうとうカゼをひいてベッドにもぐりこんでいます。

「ああ、タイクツだなあ。1日中ベッドで寝てなくちゃいけないなんて。
おいしいケーキを食べると早く治るのに」

窓からのぞいたエンジェルベアが、さっそく空の上から森中に知らせました。

「こちら、エンジェルベアのエアメール便。みなさんに悲しいお知らせです。 
エディがカゼをひきました。お見舞いにおいしいケーキを持ってきて、と言っています。
皆さん、お誘い合わせのうえ、おでかけください。」


最初にやってきたのは、なんとパパポーラー。あんなにのんびり屋のはずなのに、どうして?

「クッキーを焼いたから、エディにあげようと思って、2日ほど前から歩いていたんだ。
きょうでちょうど3日目。どうしたんだい、エディ、病気なの?」


パパポーラー、たまたまの偶然でお見舞いの1番のりだったのね。でも、どうしてエディの家まで3日もかかるのでしょう? きっと、いろんなことを考えたり、道草していたんでしょうね。でもエディはもちろん大喜び、クッキーをすぐに食べてしまいました。

2番目にエボニーがやってきました。

「エディ、これから森の泉にスキューバダイビングに行くところよ。これ、お見舞い。早くよくなってね、じゃあ!」


この真冬にスキュ−バダイビング? さすが、エボニー、元気のかたまりです。お見舞いはケーキがいいのに、エボニーが置いていったのは1冊の本。めんどうくさそうにからだを起こして、手にとって見ました。本のタイトルは

《わたしはこうしてカゼを治した! 歌って踊って快汗2時間! サンバでカゼ撃退》


エディは気が遠くなり、どさりと倒れ込みました。

「そんなことができるのは、エボニーだけだよ


そのとき、窓からリラの小さな顔がのぞきました。

「あ、本当だ。エディ、ちゃんと寝ているよ!」


リラの声に続いて、ローズ、ココ、バン、リラの4姉妹が入ってきました。

「エディ、どう、大丈夫?」
「ローズ、ありがとう。熱が100度もあって下がらないし、ノドは砂漠みたいだし、
セキの数も1万回目を越えたし‥‥ ボク、もうダメかもしれない」


ココがローズにそっと耳打ちしました。
「ねえ、ちょっとヘンじゃない。そんなに苦しそうに見えないよ」
「そうねえ

そう言って、ローズがクスッと笑いました。

「エディが元気でないとつまらないよ」
「バン、ありがとう。ボクのことはもうあきらめてくれ」
「クリスマスパーティでがんばりすぎたの?」
「ああ、とっても楽しかったねえ。ボクの人生の輝かしい黄金時代だった」


そのときリラの目の前に、毛布のはしっこからエディの足がのぞいていました。エディのふさふさのカシミヤはつやつやで、そんなにひどい病気のようには見えません。リラはその足の先を、指でちょっとつまんで、思いっきりひねりました。

「イターイ!」
エディはベッドから飛び上がりました。

「なんてことするんだ、 ボクは立派な病人なんだぞ」


それまで苦しそうに寝ていた病人があんまり元気に飛び上がったので、みんなビックリ。エディはというと、飛び上がったそのままの姿勢でみんなの顔を見回して、何かを思い出したように、またすごく苦しそうにしながらベッドにもぐり込みました。頭の上まで毛布をかぶって。ちょっと、きまりが悪いのかな。4人のコピーヌ・シスターズたちは、なんだかほっとしました。ココが、毛布の上からエディの耳元にそっとささやきました。

「エディ、すごくおいしいチョコレートケーキつくってきたよ


ガバッと毛布をはねのけて、エディが最高のスマイルを見せました。

「ヤッホー、なんだか治った気がするぞ」

なんという食欲でしょう! パパポーラーの手作りクッキーを食べた後だというのに、 エディはお見舞いのチョコレートケーキにとびつきました。お家の中で、どっと笑いがはじけました。

そのときエボニーのお見舞いの本を見つけたバン。手にとって広げてみると、中に書いてあるのはサンバのダンスです。本に書いてある通りに、ワン、ツー、スリーの3拍子のリズムでくねくね腰を振り、つまさきでステップを踏んでみました。

「これ、楽しいよ。リラ、やってごらん」


リラも同じように腰を振り、ステップを踏むと、ココもローズの手をとって、サンバの輪に加わりました。とってもかわいいサンバ・シスターズの誕生です。

「いいぞ、サンバ・シスターズ、オーレ!」


エディはベッドの上でリズムをとりながら、楽しそうに声をかけました。そしてケーキを思いっきり口いっぱいにほおばりましたが、あんまり急につめこんだので、ノドのあたりが大渋滞。苦しそうに目を回しながら、

「飲み物‥‥ジュース、ジュース、ちょうだい!」


それを窓から見ていたエンジェルベア。すぐに舞い上がり、カシミヤの森の上空からアナウンスしました。

「こちら、エンジェルベアのエアメール便。みなさんにうれしいお知らせです。

エディの風邪は治りました。治ったお祝いに、おいしいジュースが欲しいそうです。
皆さん、急いでおでかけください。」

寒い季節、みなさんもカゼなどひかないようお気をつけください。

(つづく)

(stories and concept by omrais and mycashmere)